2025.5.4
猫の恩返し
猫と一緒にいると癒されるのはなぜ?猫の癒し効果について
猫を飼っている方にとって、愛猫と触れ合っていると癒されると感じた経験があるのではないでしょうか。それによって疲れも吹っ飛び、日々の仕事などに対して前向きに取り組めるようになる方も多いことでしょう。なぜ、猫は我々人間に癒しを与えることができるのでしょうか? 「猫の癒し効果」について調べた情報をまとめてご紹介いたします。
猫が「ゴロゴロ」とのどを鳴らすことの効果
猫を飼っていると、のどをゴロゴロと鳴らすことはよくありませんか?猫がゴロゴロとのどをなぜ鳴らすのかというと、その猫が安心感を抱いているからです。 実はあのゴロゴロ音は人間の体に良い効果をもたらします。2003年にカリフォルニア大学デービス校の研究チームが以下のことを突き止めました。 猫のゴロゴロ音の周波数を25ヘルツに固定した状況下において、骨を構成する破骨細胞や骨芽細胞が活性化され骨密度の維持にそれが寄与していることが分かりました。 猫のゴロゴロ音は単に癒し効果を与えるだけでなく、骨を丈夫にすることにも効果をもたらすようです。

なぜ猫と触れ合うと幸福感を感じるのか?
猫と触れ合うと幸福感を感じる方も多いはず。一体それはなぜでしょうか? 猫と触れ合うと「オキシトシン」というホルモンが人間の体内で分泌されます。オキシトシンは別名、「幸せホルモン」ともいわれています。このホルモンの働きによって、ストレスやイライラが緩和されて心拍数が低下していきます。 それと同時に人間だけではなく猫にとっても、体内のオキシトシンの量も増加するので癒し効果を受けることができます。

心筋梗塞による死亡リスク低減効果があるって本当?
今まで紹介してきた効果以外にも、猫が人間に与える良い効果として「心筋梗塞のリスク低減」があります。 猫を飼っている人・そうでない人それぞれ約2000人を対象とし、被験者の健康状態を13年にわたった調査がアメリカで行われました。それによれば、猫を飼っている人の心筋梗塞による死亡リスクが約40%低減されるということが分かりました。 心筋梗塞による死亡リスク低減以外にも、ストレスホルモンを抑制することによる血圧を安定させる効果もあるようです。

ネコたちが世界に広がった経路があきらかに
イヌやネコは人類の友といわれて久しいですが、元来イヌは狼が家畜されたもので、ネコはヤマネコが家畜化されて生まれたもの。だが、野生の動物がどんな経路で家畜化され、品種改良されていったのかは長年の謎です。
ところが、そんな疑問を解消する糸口を発見したのが、京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授の研究グループ。宮沢准教授は世界各国のイエネコの細胞のDNAに刻まれたウイルスの痕跡を比較し、ネコたちが世界に広がった経路を明らかにしました。

ネコに関する新発見
「研究で着目したのは、ネコたちの染色体内にあるレトロウイルスというウイルスでした。このウイルスはごく稀に宿主の生殖細胞に感染することがあり、一度その宿主の生殖細胞に感染したら、その宿主の子孫全体のゲノムの同じ位置にも同じレトロウイルスを組み込むという特徴があるんです。つまり、ゲノムに組み込まれたレトロウイルスの配置を調べることで、どのネコがどの種類の子孫なのか、個体間・集団間で比較できるわけなのです」
このように染色体に刻み込まれたレトロウイルス由来配列を詳しく調べることで、ネコの起源や歴史はもちろん、品種間の差異を知ることが可能になりました。だが、「この研究の本来の目的は、ネコの移動を調べるというものではなかった」と宮沢准教授は続けます。

哺乳類進化の原動力
「レトロウイルスは宿主の形質を劇的に変える働きをもっています。がんウイルスやエイズウイルスもこの一種に含まれるため、レトロウイルスは難病の原因として悪者にされがちですが、最近の研究では、このタイプのウイルスこそが哺乳類の進化の原動力になったのではと考えられるようになってきました。たとえば、哺乳類は生まれる時に胎盤が必要ですが、胎盤が現在の形になったのも、レトロウイルスがゲノムに入り込んだおかげとされています」
つまり、レトロウイルスは哺乳類を進化させる上で非常に重要な存在だということ。宮沢准教授は、
「いま、私が一番気になっているのは、ゲノムに入り込んだレトロウイルスの配列が、分化した細胞から、iPS細胞などの全能性をもつ細胞に変わるための過程(初期化)にも関係しているのではないかということです。それがわかれば、哺乳類の進化の全容解明につながる重要な発見になるはず。その糸口が、イヌやネコのレトロウイルス研究から見つかるのでは、と期待しているんです」
と、語っており、世界のネコ好きを歓喜させた新発見の背景には、実は全哺乳類の進化にまつわる壮大な計画が隠れていたのでした。