2026.8.25
介護の不安とどう向き合う?


介護の不安とどう向き合う? 親子で元気なうちに備えられることとは
「お金」「住まい」「健康」「地域とのつながり」……あなたの老後に向けた備えは大丈夫? 失敗しない将来への備えは、親子で元気なうちに話し合い、自分に合った選択をすることがベストです。
介護・老後の課題解決のための知恵から親子のコミュニケーションの仕方まで事例やデータを幅広く紹介した『介護・老後で困る前に読む本 親子で備える知恵と早期の選択で未来を変える!』より、「[生活]介護の不安とどう向き合う?」から抜粋・再構成してご紹介します。
介護の不安とどう向き合う?
快適な介護生活や介護離職回避のカギは「知識」の備え
介護の現場を長年見てきて感じるのは、お子さんが各種介護支援サービスを親御さんに勧めても、親御さんが利用を嫌がるケースが少なくないということです。例えば、最寄りの役所や地域包括支援センター(介護・医療・保健福祉・日常生活支援などの面から市民の相談に応じる機関)に要介護認定を申請して認定が下りれば、介護保険制度を利用して自宅の掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助のサービスや、入浴介助・排せつ介助などの身体介護のサービスを受けることができます。
ところが、介護が必要な暮らしになっても「よく知らない人を家に入れたくない!」「赤の他人に入浴介助や排せつ介助をされるなんてごめんだ!」などと、他者の世話になることに拒否反応を示す方がいます。デイサービスセンターなどの通所施設に行けば、身体機能を維持するためのリハビリや、認知症の進行をゆるやかにするためのリハビリなども行うことができますが、「自分の体はまだ元気だ」「自分はボケてなんかいない」「年寄りの集まりに交ざりたくない!」と、通いたがらない方も一定数います。私の経験からすると、女性よりも男性のほうがその傾向があるように思います。
久しぶりに実家に帰ったお子さんがショックを受ける例として、失禁して汚れた寝具や使用済みオムツがタンスの引き出しに入れたままなどがあります。親御さん本人にとっては知られたくないことのため発見が遅れがちで、解決に向けては繊細な配慮が必要となります。
老化による筋力の低下や認知症により排せつを自身で行えない場合、要介護認定者であれば、ホームヘルパーがオムツ交換やトイレに行く際の介助に来てくれるようになります。今はオムツも福祉用具も高性能のものがたくさん開発されています。それらをうまく活用しながらホームヘルパーの助けを借りることができれば、自宅に住み続けることは十分に可能です。
そうした知識がないばかりに、親が「自分は大丈夫。余計な心配をするな」と意固地になったり、子が短絡的に「介護施設に入れるしかない」と思い込んでしまったりするとお互いに不幸です。
親が強がって介護サービスを拒み続けた場合、結局は家族だけで介護を担うことになります。お子さんが働いている場合は、介護との両立を迫られることになります。ひとりっ子で独身のお子さんですと、親のどちらかが亡くなってしまったり、両親ともに要介護の状態であったりすると、場合によっては介護離職せざるを得なくなってしまいます。
一方で、親の介護をしていることを職場や周囲に知らせずにひとりで抱え込んでしまっている方もいます。事情はさまざまですが、「一緒に働いている人に気を遣わせたくない」「昇進に影響するかもしれない」「自分や弟・妹の婚活の妨げになるかもしれない」などの理由をよく耳にします。総務省の「就業構造基本調査」によると、家族の介護や看護を理由とした離職者数は2021年10月から2022年9月までの1年間で約10.6万人にのぼり、特に女性の離職者数は8万人で、全体の75.3%を占めています。

どのような自治体などの公的な機関や勤務先の介護支援制度があるのか、それを活用するメリットを早めに知っておけば、介護の抱え込みや介護離職の事態は避けられます。親御さんにとってのメリットは、プロフェッショナルによる快適な支援や介助を受けられること、そして何より、お子さんの日々の生活や仕事に負担をかけずにすむことでしょう。お子さんにとってのメリットは、いざ介護となったときにビジネスケアラーとしての負担軽減や、介護離職のリスク軽減だけでなく、介護のプロフェッショナルが第三者の立場から親に適切なアドバイスをしてくれることも大きいと思います。
ただし、役所や地域包括支援センターは、要介護・要支援認定を申請する人や、現在介護支援サービスを受けている要介護・要支援認定者など、「今まさに助けが必要な人」のために、限られた人員と時間を割いて懸命に対応しているところがほとんどです。それだけに、元気な高齢者や「元気ではないが、要介護・要支援というほどでもない」人が、「早めに情報がほしい」と窓口を訪ねたとしても、なかなか対応しづらい実情があります。
自治体ごとに地域で利用できる介護サービスに関するパンフレットの発行やウェブサイトでの情報発信を行っていますので、まずはそうした情報を早めに入手し、親子で一緒に目を通しておくだけでも有効な備えになります。
老いや認知症の小さな兆しを見逃さない
親御さんと同居、もしくは近居のお子さんにお話をうかがうと、親御さんの老いや認知症について「兆しがあった」と答える方がほとんどです。「きれい好きだったのに掃除をしなくなった」「おしゃれだったのに服装に全く気を遣わなくなった」「買い物の会計でまごつくことが多くなった」といった小さな兆しです。親子が離れて住んでいて、年に1回会うか会わないかという方ですと、そうした小さな兆しに気づくことが難しく、認知症ケアの遅れや家庭内事故につながってしまいます。
要介護の認定を受けていれば、介護度に応じて掃除の支援や入浴の介助などの訪問型サービスを利用できるので、「見守り」という意味では家族はむしろ安心です。いちばん心配なのは「元気ではないが、要介護・要支援というほどでもない」段階で、この段階でいかに「兆し」に気づけるかが、重症化を未然に防ぐための分かれ道となります。
認知症の兆しに関しては、セルフチェックシートを提供するなど専門の相談窓口を設けている自治体もあるので、最寄りの役所に問い合わせてみましょう。
介護保険制度について最低限の知識をつけておく
介護保険制度は、高齢化を背景に2000年にスタートした公的保険制度です。この制度により、65歳以上の要支援者・要介護者は、訪問介護、訪問看護、福祉用具の貸与、デイサービス、通所リハビリテーション(デイケア)などのサービスを利用することができます。
介護保険サービスを受けるには、各自治体の役所や地域包括支援センターに申請して要介護(支援)認定を受ける必要があります。申請後、調査員の訪問審査などを経て、非該当(自立)、要支援1~2、要介護1~5のいずれかの結果が通知されます。
・自立……日常生活において、支援・介助・見守りの必要がない。
・要支援1……食事や入浴、排せつなど基本的な日常生活は自分ひとりで行えるが、買い物や掃除といった家事などに支援を必要とする。
・要支援2……入浴時に杖や手すりを必要とするなど、歩行や立ち上がりが不安定で、要介護になる可能性が高い。
・要介護1……身体機能の低下が見られ、入浴や排せつ、着替えなどの動作に介助を必要とする。認知機能の低下が少し見られる。
・要介護2……お金の管理や服薬など日常生活の多くに見守りや介助を必要とする。認知機能の低下が見られる。
・要介護3……立ち上がりや歩行において、杖、歩行器、車いすなどを使用している状態で、日常生活全般に介助を必要とする。認知機能が低下し、見守りを必要とする。
・要介護4……自力で立ち上がりや歩行ができないなど、日常生活のすべてにおいて介助を必要とする。理解力やコミュニケーション能力に著しい低下が見られる。
・要介護5……寝たきりの状態で、意思疎通も難しく、オムツの交換や寝返りなどに介助を必要とする。
要支援は、基本的には自分で日常生活を行えるものの多少の支援や介助が必要な状態、要介護は、自分ひとりで日常生活を送ることが難しく支援や介助が必要な状態のことで、要支援と要介護では、利用できるサービスに違いがあります。介護保険制度についての詳細は、厚生労働省のサイトで確認することができます。
相談窓口の第一歩は地域包括支援センター
2025年には団塊の世代が75歳以上となります。以後も75歳以上の人口割合は増え続けることが予想され、医療や介護のニーズの増加が見込まれています。そこで厚生労働省は、2025年をめどに「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続ける」ことができるよう、地域の包括的な支援・サービスを提供する「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。地域包括ケアシステムの中軸となる公的機関が、地域包括支援センターです。日本全国に5000か所以上設置され、市区町村が主体となって運営しています。
業務は主に「総合相談業務」「介護予防ケアマネジメント業務」「包括的・継続的ケアマネジメント業務」「権利擁護業務」の4つ。社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)などのプロフェッショナルが、介護・医療・福祉・保健の面から総合的に地域の高齢者の暮らしを支援し、介護や介護予防に必要な援助を行っています。地域包括支援センターは介護相談の最初の窓口です。介護が必要になる前に、お住まいの地域の自治体が運営する地域包括支援センターの所在地や支援内容を確認しておきましょう。
地域包括支援センターの4つの役割
総合相談
必要なサービスや制度を紹介
介護予防ケアマネジメント
要介護にならないように介護予防支援を行う
包括的・継続的ケアマネジメント
地域ケア会議の開催やケアマネ支援など
権利擁護
成年後見制度活用のサポートや虐待防止への取り組み
そのほか、介護現場歴30年以上、介護支援専門員、宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナーなどの資格を有する著者が豊富な知見や事例、データをもとに、「百人百通り」のさまざまな介護・老後の課題から自分にとって最適な選択へと導くための知恵や実践すべき行動から、親子で話しづらい話題をスムーズに行うコミュニケーションのヒントまで情報満載に紹介しています。
親子で将来について話し合う機会がつくれない次の方々にお薦め
・「介護が必要になっても、おまえたちには迷惑をかけない!」と言われている子世代
・元気な親に“終活”を勧めたら怒らせてしまい、それっきりになっている子世代
・「何が起こるかはわからないから、老後は成り行きに任せる」と思っている親世代
・自分の将来や資産について、子どもに相談するきっかけがつかめずにいる親世代

