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複雑怪奇になった介護保険制度

場当たり的な改正で複雑怪奇になった【介護保険制度】。医師「認定作業が追いつかなくなったり、実態と異なる要介護度が出されたりするといった問題も…」


「親の介護なんてまだまだ先のこと…」と思っていても、認知症の発症や転倒による骨折、入院がきっかけで【介護は予期せぬ形で始まる】ことが少なくありません。日本は介護制度が充実していますが、いざというとき、適切に利用するためにも介護サービスの種類や手続き方法などを知っておく必要があります。医師である著者・柴田元さんが、いざ直面した時に必要となる介護の基礎知識をまとめた著書『親の介護を考え始めたら読む本』より、一部を抜粋して紹介します。


突然、介護が始まることも

◆複雑化する介護保険、公的支援制度

介護が必要になった高齢者やその家族を支援する制度が介護保険です。

この制度が導入されたのは2000年で、2024年時点で四半世紀が経とうとしていますが、介護保険制度が国民にとって分かりやすく、利用しやすいものになっているかというと、必ずしもそうとはいえない現実があります。

高齢化や核家族化のなかで家族の負担を軽減し、介護を社会で支えることを目的に、公的介護保険制度が創設されたことはたいへん画期的でしたが、現在の介護・医療の現場ではさまざまな問題が浮かび上がっています。

問題の一つ目は、年齢や要介護になった原因により、サービス対象に細かな制限が多いことです。

日本での介護保険サービス支給対象者は65歳以上(第1号被保険者)か、40歳以上65歳未満(第2号被保険者)のうち加齢に伴う疾患および国が定める特定の病気、障害を有する人たちに限定されています。

逆にいえば第1号被保険者(65歳以上)では疾患、障害を問わず全員が支給の対象となりますが、第2号被保険者(40歳以上、65歳未満)は病気や疾患によっては支給対象にはなりません。


介護保険の対象となるのは?(写真提供:PhotoAC)

◆介護保険の対象から除外されるのは?

例えば、特定疾病に該当する病気のうち、パーキンソン病や関節リウマチなど16疾病については介護保険の対象となりますが、それ以外の疾病は対象とはならないので注意が必要です。

また、原則として加齢に伴う疾患、障害という前提があるため、第2号被保険者の場合は、同じ骨折後遺症でも骨粗鬆症に伴う骨折は介護保険の対象となりますが、交通事故などの外傷性骨折は対象とはなりません。

同じく認知症でもアルコール依存型のものは対象から除外されます。

二つ目の問題は、高齢者を支える公的支援制度が介護保険と医療保険の2本立ての制度になっており、その違いが分かりにくいことです。

医療保険は保険料さえ支払っておけば誰でも自動的に利用が可能ですが、介護保険サービスを利用する際には改めて介護保険の申請を行い、要介護者の認定を受ける必要があります。

さらに、この20数年の間に医療制度、診療報酬体系は大きく変わってきていますが、介護保険による認定基準等は大きく変わっていません。

発足当初の介護保険は、状態が安定した人が申請をすることを原則としていましたが、医療側の病床再編と地域医療連携システムにより患者は急性期や回復期病院に入院した状態の病状不安定のまま介護施設や在宅へ退院していくことが余儀なくされてきたため、認定作業が追いつかなくなったり、実態と異なる要介護度が出されたりするといった問題が出てきています。

◆いざというときに慌てず介護をスタートするために

三つ目は高齢者の増加に伴って国や都道府県による介護サービス、介護予防サービスはどんどん縮小されてきていることです。

自立した高齢者から要支援の人への介護予防・日常生活支援サービスが市町村の総合事業としてスタートしたのは2017年です。

同じようなデイサービスでも、介護保険によるものと市町村の総合事業によるものがあり、それぞれ利用できる範囲や費用なども異なるため、一般の人には非常に分かりにくくなっています。

また、施設入所に際しても、比較的安価な特別養護老人ホーム(以下:特養)は要介護3以上でなければ入所できません。

ちなみに介護老人保健施設は要介護1以上から入所できますが、中間施設的扱いのため、原則として長く入所していることはできません。

また、治療費用も特養と異なり、すべて施設負担となりますので、高額な薬や外用剤を使用している場合は入所を断られる可能性もあります。

これらの課題からも分かるように、わが国の介護保険制度は場当たり的な改正により、複雑怪奇な制度になってしまっているのです。

親の介護と一言でいっても考えなくてはいけないこと、やらなくてはいけないことは多岐にわたり、子ども一人ですべてを請け負うのは非常に難しく、介護に疲れて親ともども倒れてしまうケースも珍しくありません。

親にも自分にもできるだけ負担をかけないようにするためには、決して一人で抱え込まず、どこに相談すればよいのかをあらかじめ知っておくことが大切です。

介護が始まるとどんなことが必要なのか、どんな公的なサービスを受けられるのか、正しい知識を身に付けておくことで、いざというときに慌てず介護をスタートすることができます。

※本稿は『親の介護を考え始めたら読む本』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
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