2025.11.5
世界で最も豊かな国
2025年版「世界で最も豊かな国」ベスト50 1位は米国、日本は3位に

高山の湖から、東アジアのネオンまたたくスカイラインまで。UBSの調査をもとに、世界で最も豊かな国を紹介する。ユタ州のとてつもない峡谷から、中国の霧に包まれた峰まで、2025年に見えてくる世界は、美しさだけでなく、経済力という点でも豊かだ。その眺望を示すにあたり、この記事では、世界的金融機関UBSの「グローバル・ウェルス・リポート2025」にしたがって、トータルでの家計純資産(total net household wealth)という点から、世界で最も豊かな国をランクづけした(単位は米ドル)。
経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行のデータにも基づいている。だが、これは単なる数字のゲームではない。堂々たる大聖堂や、超高速列車、ブドウ園を縫って流れる川などに象徴される「富」にスポットライトをあてたガイドでもある。豊かさが芸術と出会う場所では、伝統と変革が融合している。この記事はいわば、地球有数の豊かな場所へのパスポートだ。

■1. 米国
総資産:163兆1170億ドル(約2京5120兆円)
ユタ州の砂岩でできた大聖堂のような構造物や、北西部の太平洋沿岸に広がる霧に包まれた森林などを擁する米国は、世界で最も豊かな国だ(トータルでの家計純資産にもとづく)。ニューヨークは熱狂的なエネルギーで脈打っている(鉄鋼、蒸気、ジャズがいっせいに衝突するさまを思い浮かべてほしい)。ニューオーリンズは、蒸し暑いリズムに揺れながらソウルミュージックに浸り、家々のバルコニーでブラスバンドが響き渡り、名物菓子のベニエ(揚げ菓子)で指は粉砂糖まみれになる。
ドラマを求めているのなら、西海岸を選ぶといい――ごつごつとした断崖や、太古の歩哨さながらにそびえる雄大なセコイアが待っている。イエローストーンやグランドキャニオン、ルート66沿いのレトロな食堂などの魅力も、米国の歴史ある物語の章をなしている。

■2. 中国
総資産:91兆820億ドル(約1京4030兆円)
中国は、太古の王朝の物語をささやきかける。ゴビ砂漠では荘厳な沈黙が息づき、ラクダの隊商の足元では砂丘が波打つ。東部にある山岳景勝地、黄山の霧をまとった峰々は、繊細な水墨画を思い出させる。
一方、首都の北京では、深く根づいた伝統と、とどまるところを知らないスピードが肩を並べている。人力車。かつての王宮の数々を縫うように走る流線形の超高速列車。活気あふれる夜市の上できらめく高層ビル。
その一方で、南部の風景は、水田を見下ろすようにそびえるシュールなカルスト地形や、水牛と竹林が散らばるエメラルド色の段丘で、訪れる人の目を奪う。堂々たる長江のほとりには、時の試練を経た塔と、未来的なスカイラインが共存する。時を超越し、かつ絶えず進化し続ける文明が反映されているのだ。LEDに照らされたタワーのそばを、貨物船が滑るように通り過ぎ、太古の橋の下では漁師が網を投げ入れる。

■3. 日本
総資産:21兆3320億ドル(約3286兆500億円)
日本では、春風に舞う桜の花のように、過去と未来が握手している。京都? 歴史ある寺院、絹の着物、祭壇から流れるお香のかおりを想像しよう。一方、首都東京は、ネオンまたたくエネルギーにあふれ、ラーメンの屋台や、高層ビルが立ち並ぶ一方で、そうしたビルの屋上にはのどかな庭園があったりする。
雪が積もったばかりの平野や広大な都市を切り裂くように流線形の新幹線が疾走し、北海道のラベンダー畑と、クマノミやウミガメに満ちた沖縄の光輝くサンゴ礁をつないでいる。その土地を、季節の抒情詩が彩る。春はピンク色に染まった桜、冬は険しい山々を静寂で包む粉雪。提灯に照らされた旅館の隣では、温泉の湯気が立ち上る。

■4. 英国
総資産:18兆560億ドル(約2781兆4000億円)
英国はその歴史を、仕立ての良いコートのようにまとっている。ロンドンのスカイラインは、ゴシック様式の装飾的な尖塔と、きらきら光るガラスばりのタワーを縫いとめている。パブの笑い声が、数世紀の歴史をもつ小路に溢れ出る。
スコットランドは美しくたたずみ、霧に沈む湖と吹きさらしの荒野に、伝説と伝承がこだまする。廃墟と化した修道院の下では、アカシカ(red deer)が草をはみ、石造りの小屋のなかではウイスキーが冷たい手をあたためる。
スレート(粘板岩)の産地としても有名なウェールズでは、魂の歌が響く。谷間にはもこもこした羊が散らばり、教会の扉からは、男声合唱団の弾むような調べが流れてくる。

■5. ドイツ
総資産:17兆6950億ドル(約2725兆8000億円)
ドイツは、静かなる回復と復活の土地だ。ベルリンはむき出しの創造性にあふれており、グラフィティ(スプレー缶を使った落書き)や、前衛芸術のギャラリー、重低音のアンダーグラウンドのビートで活気づいている。
世界に知られるライン川は、極上のブドウ園と、魔法に満ちたおとぎ話から出てきたかのような村々のあいだを流れ下る。一方、バイエルンの雪を頂く峰は、煙突から煙が立ちのぼる羊飼いの山小屋をふところに抱き、プレッツェルを出すビアガーデンを、スキーヤーたちが騒々しく通り過ぎる。
ハンブルクの港はクレーンや貨物船でにぎわい、北海でとれたばかりのニシンのにおいがたちこめる。秋が来ると森林は紅葉で金色に燃え上がり、ビールジョッキが元気いっぱいの音を鳴らす――昔ながらの伝統の乾杯だ。
■6. インド
総資産:16兆80億ドル(約2465兆9000億円)
インドは、単に発展しているだけではない――万華鏡のような色、音、精神をほとばしらせている。崩れ落ちそうなムガル帝国の城塞のまわりをデリーのカオスが舞い、人力車が警笛を鳴らし、スパイスたっぷりのバザールが、ターメリックやカルダモンをあふれさせる。
その一方で、ムンバイはきらびやかなボリウッドの色彩の夢を見る。そこでは、ネオンで飾られたビルボードの下で、露天商がワダ・パーヴ(インド風コロッケパン)を売っている。
雪をまとって堂々とそびえるヒマラヤ山脈では、ヤクの踏み分け道で祈祷旗がはためき、石造りの僧院が点在する。南部のケララでは、ココヤシと、織物の天蓋つきのハウスボートを背景にして、エメラルド色の入江が広がる。
北西部のラジャスタン州へ行けば、砂岩の宮殿と鏡の間が、王者の風格で光輝いている。あるいは、ヒンドゥー教の聖地であるヴァラナシへと足をのばしてもいい。ガンジス川では、揺らめく灯明皿と並んで、マリーゴールドの花輪が浮かんでいる。
■7. フランス
総資産:15兆5080億ドル(約2388兆9000億円)
フランスは、気張らない優美さで人々を誘惑する。パリはロマンチックな魅力をきらめかせ、チャーミングなカフェ、優雅な橋、街路樹のある大通りが、生き生きと息づくようなカンバスをかたちづくる。光あふれるベーカリーに並ぶ、サクサクした焼き立てのクロワッサン。宙を漂うアコーディオンの調べ。セーヌ川のほとりをそぞろ歩く恋人たち。
一方、プロヴァンスは、ラベンダー畑、ブドウ園、間断のないセミのコーラスで活気づく。リヴィエラでは、海岸の魅力が燦然と輝く。小石の浜辺で日光浴する人たちがくつろぎ、ターコイズブルーの港にヨットが浮かび、ストライプのパラソルの下でロゼワインが注がれる。
だが、ノルマンディのたたずまいはおごそかだ――その険しい崖には痛切な歴史が刻まれている。風雨にさらされた掩蔽壕(えんぺいごう)の近くにはケシが生え、潮がオマハ・ビーチ(1944年、連合国によるノルマンディ侵攻作戦における最初の上陸地点の一つにつけられたコードネーム)を静かに洗っている。
■8. カナダ
総資産:11兆5500億ドル(約1779兆2000億円)
カナダは、一服の新鮮な空気のようだ。広大で、手つかずで、静かな威厳をたたえている。
バンクーバーは、塩辛い海の霧と、洗練された現代都市とのバランスを保つ。森に覆われた山々と、ガラスばりの高層ビルを輪郭とするこの街では、サイクリストが寿司バーを通り過ぎ、ヒマラヤスギの香るトレイルを颯爽と走り抜ける。
ノバスコシアでは、岩がちの海岸が、海とともに生きる心とぶつかりあっている――ロブスターの罠や、大西洋の霧を貫く灯台のまたたきを思い浮かべてほしい。空高くそびえるロッキー山脈は、氷河湖をふところに抱き、雪に覆われた峰の下をグリズリーが歩きまわる。モレーン湖ではカヌーが滑走し、松に縁どられたトレイルのそばで、エルクが草を食む。
■9. 韓国
総資産:11兆410億ドル(約1700兆7900億円)
コンパクトでダイナミックな韓国には、伝統が深く染みわたっている。首都ソウルはネオン色のエネルギーにあふれ、伝統的な王宮が、ガラスばりのタワーに挟まれている。夜市では、スパイシーなトッポギ(餅料理)や焼きイカがじゅうじゅうと音をたてている。
済州島は火山の美を湛え、入り組んだ溶岩洞窟、漢拏(ハンラ)山のクレーター・トレイル、エメラルド色の水面に流れ落ちる滝がある。田園地方には、穏やかに起伏する緑の風景が広がり、鏡のような水田、智異(チリ)山などの霧に包まれた峰、太古からある松の木の下で僧が読経する寺院が点在する。
■10. イタリア
総資産:10兆6000億ドル(約1632兆8600億円)
イタリアは、生き生きと息づく傑作だ。ローマでは、装飾的な噴水や遺跡が、コロッセオの大歓声や、黄昏時のナヴォーナ広場の静寂といった帝国の壮麗さを伝えている。ヴェネツィアではゴンドラが、揺れる迷宮のような運河を流れ、まるで水でできた詩のようだ。フィレンツェは、ルネサンスの輝きを放つ。そのドームや美術館は、芸術的な壮麗さに満ちている。ちょうど、静かな威厳をまとって立つミケランジェロのダビデ像のように。
断崖絶壁や複雑な入江が入り混じるアマルフィ海岸では、サファイア色の海のすぐ上まで建物が並ぶ。切り立った崖にしがみつくようにしてレモンの果樹園が並び、パステルカラーの村々が夢のように寄り集まる。
内陸では、起伏するブドウ園と、丘の頂にあるテラコッタの町が金色の光を浴びている。ひなびたセラーではワインが注がれ、教会の鐘は、のんびりとした暮らしのリズムを告げる。そして、王冠を飾る宝石はシチリア島だ。そこでは、エトナ火山のドラマがくすぶっている。
■2025年版「世界で最も豊かな国」11位から50位までの一覧
11. オーストラリア:10兆5000億ドル(約1617兆4500億円)
12. スペイン:9兆1530億ドル(約1409兆9600億円)
13. 台湾:6兆810億ドル(約936兆7400億円)
14. オランダ:5兆3660億ドル(約826兆5900億円)
15. スイス:4兆9140億ドル(約756兆9700億円)
16. ブラジル:4兆8350億ドル(約744兆8000億円)
17. ロシア:4兆6080億ドル(約709兆8300億円)
18. 香港:3兆8210億ドル(約588兆6000億円)
19. メキシコ:3兆7830億ドル(約582兆7400億円)
20. インドネシア:3兆5910億ドル(約553兆1700億円)
21. ベルギー:3兆2070億ドル(約494兆200億円)
22. スウェーデン:2兆7370億ドル(約421兆6200億円)
23. デンマーク:2兆2580億ドル(約347兆8300億円)
24. サウジアラビア:2兆2470億ドル(約346兆1300億円)
25. シンガポール:2兆1250億ドル(約327兆3400億円)
26. トルコ:2兆220億ドル(約311兆4700億円)
27. ポーランド:1兆8740億ドル(約288兆6800億円)
28. オーストリア:1兆7980億ドル(約276兆9700億円)
29. イスラエル:1兆7240億ドル(約265兆5700億円)
30. ノルウェー:1兆5980億ドル(約246兆1600億円)
31. タイ:1兆5810億ドル(約243兆5400億円)
32. ニュージーランド:1兆5510億ドル(約238兆9200億円)
33. ポルトガル:1兆4050億ドル(約216兆4300億円)
34. アラブ首長国連邦:1兆2920億ドル(約199兆200億円)
35. 南アフリカ:1兆270億ドル(約158兆2000億円)
36. アイルランド:1兆140億ドル(約156兆2000億円)
37. ギリシャ:9380億ドル(約144兆4900億円)
38. チリ:8420億ドル(約129兆446億円)
39. フィンランド:8210億ドル(約125兆7000億円)
40. チェコ:7990億ドル(約123兆800億円)
41. ルーマニア:7200億ドル(約110兆9100億円)
42. コロンビア:6880億ドル(約105兆9800億円)
43. カザフスタン:5790億ドル(約89兆1900億円)
44. ハンガリー:4650億ドル(約70兆2400億円)
45. カタール:4500億ドル(約69兆3200億円)
46. ルクセンブルク:3010億ドル(約46兆3700億円)
47. ブルガリア:2810億ドル(約43兆2900億円)
48. スロバキア:2760億ドル(約42兆5200億円)
49. クロアチア:2590億ドル(約39兆9000億円)
50. ウルグアイ:2260億ドル(約34兆8100億円)
一覧に戻る

高山の湖から、東アジアのネオンまたたくスカイラインまで。UBSの調査をもとに、世界で最も豊かな国を紹介する。ユタ州のとてつもない峡谷から、中国の霧に包まれた峰まで、2025年に見えてくる世界は、美しさだけでなく、経済力という点でも豊かだ。その眺望を示すにあたり、この記事では、世界的金融機関UBSの「グローバル・ウェルス・リポート2025」にしたがって、トータルでの家計純資産(total net household wealth)という点から、世界で最も豊かな国をランクづけした(単位は米ドル)。
経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行のデータにも基づいている。だが、これは単なる数字のゲームではない。堂々たる大聖堂や、超高速列車、ブドウ園を縫って流れる川などに象徴される「富」にスポットライトをあてたガイドでもある。豊かさが芸術と出会う場所では、伝統と変革が融合している。この記事はいわば、地球有数の豊かな場所へのパスポートだ。

■1. 米国
総資産:163兆1170億ドル(約2京5120兆円)
ユタ州の砂岩でできた大聖堂のような構造物や、北西部の太平洋沿岸に広がる霧に包まれた森林などを擁する米国は、世界で最も豊かな国だ(トータルでの家計純資産にもとづく)。ニューヨークは熱狂的なエネルギーで脈打っている(鉄鋼、蒸気、ジャズがいっせいに衝突するさまを思い浮かべてほしい)。ニューオーリンズは、蒸し暑いリズムに揺れながらソウルミュージックに浸り、家々のバルコニーでブラスバンドが響き渡り、名物菓子のベニエ(揚げ菓子)で指は粉砂糖まみれになる。
ドラマを求めているのなら、西海岸を選ぶといい――ごつごつとした断崖や、太古の歩哨さながらにそびえる雄大なセコイアが待っている。イエローストーンやグランドキャニオン、ルート66沿いのレトロな食堂などの魅力も、米国の歴史ある物語の章をなしている。

■2. 中国
総資産:91兆820億ドル(約1京4030兆円)
中国は、太古の王朝の物語をささやきかける。ゴビ砂漠では荘厳な沈黙が息づき、ラクダの隊商の足元では砂丘が波打つ。東部にある山岳景勝地、黄山の霧をまとった峰々は、繊細な水墨画を思い出させる。
一方、首都の北京では、深く根づいた伝統と、とどまるところを知らないスピードが肩を並べている。人力車。かつての王宮の数々を縫うように走る流線形の超高速列車。活気あふれる夜市の上できらめく高層ビル。
その一方で、南部の風景は、水田を見下ろすようにそびえるシュールなカルスト地形や、水牛と竹林が散らばるエメラルド色の段丘で、訪れる人の目を奪う。堂々たる長江のほとりには、時の試練を経た塔と、未来的なスカイラインが共存する。時を超越し、かつ絶えず進化し続ける文明が反映されているのだ。LEDに照らされたタワーのそばを、貨物船が滑るように通り過ぎ、太古の橋の下では漁師が網を投げ入れる。

■3. 日本
総資産:21兆3320億ドル(約3286兆500億円)
日本では、春風に舞う桜の花のように、過去と未来が握手している。京都? 歴史ある寺院、絹の着物、祭壇から流れるお香のかおりを想像しよう。一方、首都東京は、ネオンまたたくエネルギーにあふれ、ラーメンの屋台や、高層ビルが立ち並ぶ一方で、そうしたビルの屋上にはのどかな庭園があったりする。
雪が積もったばかりの平野や広大な都市を切り裂くように流線形の新幹線が疾走し、北海道のラベンダー畑と、クマノミやウミガメに満ちた沖縄の光輝くサンゴ礁をつないでいる。その土地を、季節の抒情詩が彩る。春はピンク色に染まった桜、冬は険しい山々を静寂で包む粉雪。提灯に照らされた旅館の隣では、温泉の湯気が立ち上る。

■4. 英国
総資産:18兆560億ドル(約2781兆4000億円)
英国はその歴史を、仕立ての良いコートのようにまとっている。ロンドンのスカイラインは、ゴシック様式の装飾的な尖塔と、きらきら光るガラスばりのタワーを縫いとめている。パブの笑い声が、数世紀の歴史をもつ小路に溢れ出る。
スコットランドは美しくたたずみ、霧に沈む湖と吹きさらしの荒野に、伝説と伝承がこだまする。廃墟と化した修道院の下では、アカシカ(red deer)が草をはみ、石造りの小屋のなかではウイスキーが冷たい手をあたためる。
スレート(粘板岩)の産地としても有名なウェールズでは、魂の歌が響く。谷間にはもこもこした羊が散らばり、教会の扉からは、男声合唱団の弾むような調べが流れてくる。

■5. ドイツ
総資産:17兆6950億ドル(約2725兆8000億円)
ドイツは、静かなる回復と復活の土地だ。ベルリンはむき出しの創造性にあふれており、グラフィティ(スプレー缶を使った落書き)や、前衛芸術のギャラリー、重低音のアンダーグラウンドのビートで活気づいている。
世界に知られるライン川は、極上のブドウ園と、魔法に満ちたおとぎ話から出てきたかのような村々のあいだを流れ下る。一方、バイエルンの雪を頂く峰は、煙突から煙が立ちのぼる羊飼いの山小屋をふところに抱き、プレッツェルを出すビアガーデンを、スキーヤーたちが騒々しく通り過ぎる。
ハンブルクの港はクレーンや貨物船でにぎわい、北海でとれたばかりのニシンのにおいがたちこめる。秋が来ると森林は紅葉で金色に燃え上がり、ビールジョッキが元気いっぱいの音を鳴らす――昔ながらの伝統の乾杯だ。
■6. インド
総資産:16兆80億ドル(約2465兆9000億円)
インドは、単に発展しているだけではない――万華鏡のような色、音、精神をほとばしらせている。崩れ落ちそうなムガル帝国の城塞のまわりをデリーのカオスが舞い、人力車が警笛を鳴らし、スパイスたっぷりのバザールが、ターメリックやカルダモンをあふれさせる。
その一方で、ムンバイはきらびやかなボリウッドの色彩の夢を見る。そこでは、ネオンで飾られたビルボードの下で、露天商がワダ・パーヴ(インド風コロッケパン)を売っている。
雪をまとって堂々とそびえるヒマラヤ山脈では、ヤクの踏み分け道で祈祷旗がはためき、石造りの僧院が点在する。南部のケララでは、ココヤシと、織物の天蓋つきのハウスボートを背景にして、エメラルド色の入江が広がる。
北西部のラジャスタン州へ行けば、砂岩の宮殿と鏡の間が、王者の風格で光輝いている。あるいは、ヒンドゥー教の聖地であるヴァラナシへと足をのばしてもいい。ガンジス川では、揺らめく灯明皿と並んで、マリーゴールドの花輪が浮かんでいる。
■7. フランス
総資産:15兆5080億ドル(約2388兆9000億円)
フランスは、気張らない優美さで人々を誘惑する。パリはロマンチックな魅力をきらめかせ、チャーミングなカフェ、優雅な橋、街路樹のある大通りが、生き生きと息づくようなカンバスをかたちづくる。光あふれるベーカリーに並ぶ、サクサクした焼き立てのクロワッサン。宙を漂うアコーディオンの調べ。セーヌ川のほとりをそぞろ歩く恋人たち。
一方、プロヴァンスは、ラベンダー畑、ブドウ園、間断のないセミのコーラスで活気づく。リヴィエラでは、海岸の魅力が燦然と輝く。小石の浜辺で日光浴する人たちがくつろぎ、ターコイズブルーの港にヨットが浮かび、ストライプのパラソルの下でロゼワインが注がれる。
だが、ノルマンディのたたずまいはおごそかだ――その険しい崖には痛切な歴史が刻まれている。風雨にさらされた掩蔽壕(えんぺいごう)の近くにはケシが生え、潮がオマハ・ビーチ(1944年、連合国によるノルマンディ侵攻作戦における最初の上陸地点の一つにつけられたコードネーム)を静かに洗っている。
■8. カナダ
総資産:11兆5500億ドル(約1779兆2000億円)
カナダは、一服の新鮮な空気のようだ。広大で、手つかずで、静かな威厳をたたえている。
バンクーバーは、塩辛い海の霧と、洗練された現代都市とのバランスを保つ。森に覆われた山々と、ガラスばりの高層ビルを輪郭とするこの街では、サイクリストが寿司バーを通り過ぎ、ヒマラヤスギの香るトレイルを颯爽と走り抜ける。
ノバスコシアでは、岩がちの海岸が、海とともに生きる心とぶつかりあっている――ロブスターの罠や、大西洋の霧を貫く灯台のまたたきを思い浮かべてほしい。空高くそびえるロッキー山脈は、氷河湖をふところに抱き、雪に覆われた峰の下をグリズリーが歩きまわる。モレーン湖ではカヌーが滑走し、松に縁どられたトレイルのそばで、エルクが草を食む。
■9. 韓国
総資産:11兆410億ドル(約1700兆7900億円)
コンパクトでダイナミックな韓国には、伝統が深く染みわたっている。首都ソウルはネオン色のエネルギーにあふれ、伝統的な王宮が、ガラスばりのタワーに挟まれている。夜市では、スパイシーなトッポギ(餅料理)や焼きイカがじゅうじゅうと音をたてている。
済州島は火山の美を湛え、入り組んだ溶岩洞窟、漢拏(ハンラ)山のクレーター・トレイル、エメラルド色の水面に流れ落ちる滝がある。田園地方には、穏やかに起伏する緑の風景が広がり、鏡のような水田、智異(チリ)山などの霧に包まれた峰、太古からある松の木の下で僧が読経する寺院が点在する。
■10. イタリア
総資産:10兆6000億ドル(約1632兆8600億円)
イタリアは、生き生きと息づく傑作だ。ローマでは、装飾的な噴水や遺跡が、コロッセオの大歓声や、黄昏時のナヴォーナ広場の静寂といった帝国の壮麗さを伝えている。ヴェネツィアではゴンドラが、揺れる迷宮のような運河を流れ、まるで水でできた詩のようだ。フィレンツェは、ルネサンスの輝きを放つ。そのドームや美術館は、芸術的な壮麗さに満ちている。ちょうど、静かな威厳をまとって立つミケランジェロのダビデ像のように。
断崖絶壁や複雑な入江が入り混じるアマルフィ海岸では、サファイア色の海のすぐ上まで建物が並ぶ。切り立った崖にしがみつくようにしてレモンの果樹園が並び、パステルカラーの村々が夢のように寄り集まる。
内陸では、起伏するブドウ園と、丘の頂にあるテラコッタの町が金色の光を浴びている。ひなびたセラーではワインが注がれ、教会の鐘は、のんびりとした暮らしのリズムを告げる。そして、王冠を飾る宝石はシチリア島だ。そこでは、エトナ火山のドラマがくすぶっている。
■2025年版「世界で最も豊かな国」11位から50位までの一覧
11. オーストラリア:10兆5000億ドル(約1617兆4500億円)
12. スペイン:9兆1530億ドル(約1409兆9600億円)
13. 台湾:6兆810億ドル(約936兆7400億円)
14. オランダ:5兆3660億ドル(約826兆5900億円)
15. スイス:4兆9140億ドル(約756兆9700億円)
16. ブラジル:4兆8350億ドル(約744兆8000億円)
17. ロシア:4兆6080億ドル(約709兆8300億円)
18. 香港:3兆8210億ドル(約588兆6000億円)
19. メキシコ:3兆7830億ドル(約582兆7400億円)
20. インドネシア:3兆5910億ドル(約553兆1700億円)
21. ベルギー:3兆2070億ドル(約494兆200億円)
22. スウェーデン:2兆7370億ドル(約421兆6200億円)
23. デンマーク:2兆2580億ドル(約347兆8300億円)
24. サウジアラビア:2兆2470億ドル(約346兆1300億円)
25. シンガポール:2兆1250億ドル(約327兆3400億円)
26. トルコ:2兆220億ドル(約311兆4700億円)
27. ポーランド:1兆8740億ドル(約288兆6800億円)
28. オーストリア:1兆7980億ドル(約276兆9700億円)
29. イスラエル:1兆7240億ドル(約265兆5700億円)
30. ノルウェー:1兆5980億ドル(約246兆1600億円)
31. タイ:1兆5810億ドル(約243兆5400億円)
32. ニュージーランド:1兆5510億ドル(約238兆9200億円)
33. ポルトガル:1兆4050億ドル(約216兆4300億円)
34. アラブ首長国連邦:1兆2920億ドル(約199兆200億円)
35. 南アフリカ:1兆270億ドル(約158兆2000億円)
36. アイルランド:1兆140億ドル(約156兆2000億円)
37. ギリシャ:9380億ドル(約144兆4900億円)
38. チリ:8420億ドル(約129兆446億円)
39. フィンランド:8210億ドル(約125兆7000億円)
40. チェコ:7990億ドル(約123兆800億円)
41. ルーマニア:7200億ドル(約110兆9100億円)
42. コロンビア:6880億ドル(約105兆9800億円)
43. カザフスタン:5790億ドル(約89兆1900億円)
44. ハンガリー:4650億ドル(約70兆2400億円)
45. カタール:4500億ドル(約69兆3200億円)
46. ルクセンブルク:3010億ドル(約46兆3700億円)
47. ブルガリア:2810億ドル(約43兆2900億円)
48. スロバキア:2760億ドル(約42兆5200億円)
49. クロアチア:2590億ドル(約39兆9000億円)
50. ウルグアイ:2260億ドル(約34兆8100億円)

