2025.7.12
政権交代か?
政界再編必至で頼れるのは“鉄ちゃん仲間”か? “推し活同志”か? 参院選後を見据えて混迷極まる永田町版「人狼ゲーム」の行方
7月3日、参議院選挙の火ぶたがいよいよ切って落とされた。昨年10月の衆院選で自公が過半数割れとなった石破茂首相にとって、非常に厳しい戦いになるだろう。
石破首相は6月23日の会見で記者から勝敗ラインを聞かれ、「改選議席も含めて自公で過半数」と答えた。自民党の非改選議席は62議席(関口昌一議長を含む)で、13議席の公明党と合わせると75議席。そのため、今回の参院選で50議席を獲得すれば、「自公連立政権の勝利」となる。
公明党は現有の14議席以上の確保を目標としている。それが実現されれば、自民党は36議席を獲得すればよい計算になる。
しかし、現実は非常に厳しい。
■都議選が暗示する「新たな枠組み」の必要性
今年は12年に1度、参院選と東京都議選が同一年に行われる「巳年選挙」だが、6月22日の都議選では自民党の獲得議席は21議席と、2017年の23議席を下回り、最低記録を更新した。
支持者の高齢化により戦力の低下が著しい公明党も、これまで最も苦戦区だった目黒区選挙区での擁立を諦めたにもかかわらず、新宿区選挙区で1議席、大田区選挙区で2議席を落として19議席に甘んじた。これで1993年から8回にわたって続いた都議選での全勝は途絶えたことになる。
くしくもこの期間は公明党が新進党に参加し、後に自民党と連立を組んだ時期と重なっている。そして衆参両院で自公が少数派に転落しようとしている現在、新たな政治の枠組みが必要になりつつあるのかもしれない。
石破首相は6月29日夜、岸田文雄前首相と都内のホテルで会食し、参院選での「改選議席を含めて自公で過半数維持」を確認したとされる。岸田前首相は昨年9月の総裁選で石破首相を支持し、石破政権を支えるキーパーソンだ。
ただ、今年5月にはBSのニュース番組で「(参院選後は)連立のありようをはじめ、いろいろな知恵を出していくことが求められる」と連立の組み直しの可能性について発言。6月25日にさいたま市で講演した際には、政権交代の可能性について危惧を示したうえで、野党との連携についても言及した。よって同日夜の石破・岸田会談では、参院選について“それ以上”のことが話されたと推測できる。
■自公はどの第3政党と組むのか
そもそも衆議院で自公が過半数を割っている以上、参院選の目標が「非改選議席を含めて自公で過半数」などという控え目な数字でよいはずがない。
定数248議席の参議院では、過半数は125議席だが、常任委員会で委員長を含めて過半数を制する「安定多数」は131議席以上、委員だけで多数を制する「絶対安定多数」は140議席以上となる。また、166議席以上の「圧倒的多数」になると、秘密会の開催や、国会議員の除名、憲法改正の発議が可能だ。 したがって、与党で安定多数を得るためには参院選で56議席以上、絶対安定多数には65議席、そして圧倒的多数となるためには91議席を確保しなくてはならない。6月22日に閉会した通常国会の最終盤に、野党によるガソリンの暫定税率廃止法案の強行成立を参議院で阻止できたのは、自公が絶対安定多数を維持していたからにほかならない。
そのためには、自公以外の第3政党と組む必要がある。候補として考えられるのは、立憲民主党(非改選18議席)と日本維新の会(同12議席)、そして国民民主党(同7議席)だ。 もっとも、6月29日に行われた令和国民会議(令和臨調)の対話集会で、公明党の斉藤鉄夫代表は第3政党の与党入りに否定的な姿勢を見せ、日本維新の会の吉村洋文代表も連立入りを明確に否定した。 立憲民主党の野田佳彦代表は「基本は単独政権を目指す。そして自分たちの考えに近い政党とよく協議して、連立できるかということを考えていく」と述べ、「自民党とはそう簡単ではない」とハードルを上げた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は「誰と組むかより、何を成し遂げるかを判断の基準において政治判断をしていきたい」と、連立入りについて“言い訳”の余地を残している。 こうした中で、石破首相はどのように判断するのか。自民党の党内事情も考慮しなければならない。そのカギとなるのが、このところ動きを活発化させている、“アンチ石破”の急先鋒である麻生太郎最高顧問だ。 麻生最高顧問は6月18日に岸田前首相と会食して意見交換を行い、26日には世耕弘成元参議院幹事長らと懇談した。世耕氏は昨年10月の衆院選に鞍替え出馬して初当選したが、依然として参院旧安倍派の議員たちに影響力を持っており、総裁候補の1人と目される。
石破首相が29日に岸田前首相に会食を呼びかけたのも、こうした動きを牽制する意図があったのかもしれない。なお、麻生最高顧問は国民民主党の榛葉賀津也幹事長と近く、かつて自民党の一部でささかれた「玉木首班説」の出どころともいわれた。
これは「石破降ろし」にほかならない。そのような動きを石破首相が嫌ったのなら、昨年12月の自公国3党幹事長合意が実現されないままであることの説明はつく。そして、自公と立憲民主党が共同提出した年金改革関連法が6月13日に成立したことも、3党の近接性を示している。
■参院選後に待つのは「政界の整理」?
連立を組むにはまず、トップ同士のケミストリー(相性)が合うことが必要だ。石破首相と日本維新の会の前原誠司共同代表は、ともに鉄道オタクで親しい関係。石破首相と野田代表には「キャンディーズのミキちゃん(藤村美樹さん)のファン」という共通点がある。
さらに政策面においても、石破首相は立憲民主党と折り合えるところは少なくない。例えば立憲民主党が主張する選択的夫婦別姓について、石破首相は就任前の2024年7月下旬の報道番組で「やらない理由がよくわからない」と述べていた。
もっとも、特定の政党との恒久的な連立ではなく、政策ごとに「パーシャル連合」を組む可能性もある。後者は石破首相にとって政権運営はより大変になるが、うまくいけば長期政権につながるものだ。
まずは7月3日に始った参院選で、自公が過半数を制することができるかどうか。その後に待っているのは、政界再編ならぬ「政界の整理」かもしれない。

