2025.7.6
日本は30%か35%

トランプ大統領 “日本は30%か35%” 関税引き上げ示唆
2025年7月2日 19時34分
アメリカのトランプ大統領は関税措置をめぐる日米交渉に関連して、1日、日本との貿易が不公平だったと不満を示し、日本に対して30%か35%の関税を課すなどとして対日関税の引き上げを示唆しました。
来週9日に迫っている日本などへの「相互関税」の一時停止の期限についても延長しない考えを示しており、日本に厳しい圧力をかけています。
トランプ大統領は関税措置をめぐる日米交渉に関連して、1日、大統領専用機内で記者団の質問に対し「日本はコメを必要としているにもかかわらずわれわれのコメを受け取らない。われわれの自動車も購入しない。貿易に関しては日本は非常に不公平だった。その時代は終わった」などと不満を示しました。
そのうえで「日本がわれわれの求めに応じられないということを理解しているが、そのために30%か35%の関税、もしくはわれわれが決定する関税を支払うことになる」と述べて対日関税の引き上げを示唆しました。
また来週9日に迫っている日本を含む世界各国に対する「相互関税」の一時停止の期限について延長しない考えを示しました。
日本に対しては現在10%の一律関税が課されていて、一時停止されている「相互関税」とあわせると関税率は24%となっています。
ベッセント財務長官は6月11日、期限が延長される可能性を示していましたが、トランプ大統領は否定した形です。
イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズは「世界4位の経済大国に対して関税を引き上げるという脅威は世界貿易戦争を再燃させる懸念を強めることになる」などと伝えています。
トランプ大統領は貿易不均衡への不満を背景に日本に厳しい圧力をかけています。
専門家「発言は脅しの域を出ない」

トランプ大統領が対日関税の引き上げを示唆したねらいについて、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「当初アメリカ側は日本と優先して交渉し、真っ先に妥結してそれを成功例として他国との交渉をまとめるねらいだったが、予想外に日本が譲歩しなかったためトランプ大統領の大きな不満が表れているのではないか」と指摘しました。
その上で「現時点では、今回の日本に対する発言は脅しの域を出ないと思う。関税を強化するとアメリカの輸入物価が上がり夏場にかけてアメリカ経済にも影響が出てくる。そうなった場合、アメリカ国内でも関税政策への批判が出るほか、金融市場が混乱する可能性もある」という認識を示しました。
また、日本の今後の交渉スタンスについて木内氏は「何回もアメリカに行くということは、日本として合意を望んでいることをアピールできるが、訪米したからといって話がまとまるわけではない。アメリカの関税政策は行き詰まってくると思うし向こう数か月のうちにみずから関税を引き下げることもありえると思っている。その手前で日本が譲歩してしまうのはマイナスだと思う」と指摘しました。
日本の対米貿易 46年連続黒字
トランプ大統領は「日本は30年、40年にわたってわれわれから富を奪い続けてきた」と発言しましたが、こうした不満の背景には日本のアメリカに対する貿易黒字が、長年、続いていることがあると見られます。
日本のアメリカに対する貿易黒字は、財務省の「貿易統計」でデータが参照できる1979年から2024年まで46年連続で、黒字額は少ない年でも1兆円以上あります。特に1980年代には日本車などの輸出が拡大し、1985年には統計が残る中では最大となる9兆3693億円の黒字を記録しました。
当時、アメリカでは日本への厳しい批判が起こって日米貿易摩擦に発展し、1981年に日本の自動車メーカー各社は年間の輸出台数を制限する自主規制を余儀なくされたほか、1985年にアメリカの呼びかけでドル高を是正する「プラザ合意」も行われました。
その後は上下しながらもアメリカに対する貿易黒字は続き、おととしと去年は円安ドル高も背景に8兆円台の黒字となりました。
アメリカへの輸出額のうち、最も大きな割合を占めるのが自動車で、2024年1年間の日本からアメリカへの自動車の輸出額は6兆264億円、アメリカへの輸出全体の28.3%を占めています。
日米交渉 折り合いの歴史
工業製品の輸出拡大を受けて、日本はアメリカからたびたび貿易の是正を要求され、交渉での対応を迫られてきました。
日米の貿易摩擦が特に激しくなったのは、1980年代、レーガン政権の時でした。
当時日本は高度経済成長のもと、テレビや自動車、半導体など幅広い分野で工業製品の輸出を拡大した結果、アメリカの対日貿易赤字が急速に増加しました。
日本製の自動車がたたき壊される様子がテレビで全米に伝えられるなど「ジャパン・バッシング」と呼ばれる日本への厳しい批判が巻き起こりました。
日本はアメリカ向けの自動車の輸出台数を自主的に制限したほか、海外製の半導体の参入機会を拡大する「日米半導体協定」が結ばれました。
次の政権、ブッシュ大統領の時代には日本に対するアメリカの輸出が伸びないのは、日本市場の閉鎖性に問題があるとして幅広い分野での是正を要求され、政府は外資系の企業が参入しやすくなるよう規制緩和を行うことなどで折り合いました。
さらにクリントン政権は、一定のアメリカ製の自動車部品を購入する数値目標の導入を強く求め、日本が激しく抵抗する事態となりました。
この際は、数値目標を導入しない代わりに、日本のメーカーが輸入を拡大することなどを盛り込んだ、自主計画を発表するという形で妥結しました。
その後、日本のメーカーがアメリカ国内での現地生産を拡大したこともあり、貿易をめぐる日米間の緊張は弱まっていきました。
しかし、8年前の2017年、トランプ政権が誕生し、アメリカの要求は再び激しくなります。
当時、トランプ大統領は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱を決め、日本には2国間での交渉に応じるよう求めました。
アメリカ側は、日本車に高い関税をかける構えを見せたほか、牛肉や豚肉といった農産物の市場開放を求めました。
その結果、2019年、日米首脳会談で交渉が最終合意に至り、日本はTPPで合意した水準を超えない範囲で牛肉や豚肉などの関税引き下げに応じる一方、アメリカは幅広い工業品の関税を撤廃することになり、焦点となっていた日本車への追加関税の発動は回避されました。
各国の関税交渉は
アメリカのトランプ政権による「相互関税」の一時停止の期限が来週9日に迫っています。ベッセント財務長官は重要な貿易相手は18あると説明し、交渉を集中的に進めています。これまでにアメリカが貿易交渉で正式に合意できたのはイギリスだけです。
イギリスとの間では6月16日、関税措置をめぐる貿易協定の文書に正式に署名しました。
中国との交渉ではことし5月に相互に課している追加関税を115%引き下げることで合意し一部の関税について90日間停止し協議を続けています。
インドとは今週中にも暫定的な合意に達する見通しだとイギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズが1日に報じました。
トランプ大統領は1日、記者団に対して「インドとの合意は可能だ。もし、インドが受け入れればわれわれははるかに低い関税での合意となるだろう」と述べました。
EU=ヨーロッパ連合との交渉ではEUの関税交渉を担当する委員がワシントンを訪問し、3日にアメリカ側と会談を行う予定です。
アメリカのメディア、ブルームバーグはEUが10%の一律関税を受け入れる一方、医薬品や半導体、旅客機などでそれよりも低い税率とするよう求めていると伝えています。
韓国は6月、政府高官がアメリカを訪問して協議を行いました。
韓国の通信社、連合ニュースによりますと、韓国政府は交渉の期限を9日以降に延長するよう求める可能性があるということです。
カナダとの交渉をめぐっては、トランプ大統領が6月、カナダのデジタルサービス税はアメリカの大手IT企業を狙い撃ちしたものだと批判し、交渉を打ち切る意向を示していました。
これに対してカナダ政府はこの税を廃止する方針を示し、両国は交渉を再開しました。そのうえで7月21日までの合意を目指すとしています。
石破首相「双方の国益を実現させるべく全力を尽くす」

石破総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「現在日米で協議中であり、トランプ大統領の発言ではあるが一つ一つについてコメントはしない」と述べました。
その上で「日米は真摯にお互いに国益実現のため協議を重ね一致点を見いだすべく最善の努力をしている。どちらかの利益だけが実現するのは交渉ではなく、国益をかけた交渉を続けている。赤澤経済再生担当大臣もほとんど毎週のように訪米し交渉にあたっており、努力は多としたいし身を粉にして一生懸命努力してきたことは意義深い」と述べました。
また、トランプ大統領が来週9日の「相互関税」の一時停止の期限を延長しない考えを示していることをめぐり、記者団が「交渉が打ち切られた場合どう対応するか」と質問したのに対し「『そうなったらどうするか』ということについては答えかねる。双方の国益を実現させるべく全力を尽くすということしか申し上げられない」と述べました。
赤澤経済再生相「真摯かつ誠実な協議を続けたい」

赤澤経済再生担当大臣は内閣府で記者団に対し「アメリカの政府関係者の発信に対しコメントは差し控えたい。わが国としては引き続き双方の利益となる合意の実現に向けて真摯かつ誠実な協議を(しんし)精力的に続けたい。現地時間の先月30日には事務レベルで集中的に協議を行った」と述べました。
その上で「守るべき国益を譲れないからこそなかなか一致点が見つけられていない分野がありパッケージとしての合意に至っていない。両国の国益をかけた協議なので一筋縄ではいかない面は当然ある。国益をしっかり守り合意にこぎ着けたい」と強調しました。
また来週9日の「相互関税」の一時停止の期限までにアメリカを訪問する考えがあるか問われ「必要だと判断すれば可能性は否定しないが現時点で具体的な日程などが決まっているわけではない」と述べました。
日本商工会議所 小林会頭「過敏に反応してもしようがない」

日本商工会議所の小林会頭は2日の記者会見で、「トランプ大統領のひと言ひと言に過敏に反応してもしょうがない。今までも必ずしも彼の言っていることがそのまま実現したわけではない」と述べました。
そのうえで、「われわれが過敏に反応すると交渉では相手の思うつぼということにもなりかねないので、冷静に受けとめてやっていくということだ」と述べ、冷静に対応すべきだという考えを示しました。
一方、関税が引き上げられた場合の影響について、小林会頭は「関税が高くなれば当然、企業への影響は大きい。われわれとしては政府と密に連絡を取りながら、中小企業が困るような結果が出てきたら最大限に支援する」と述べました。
日本製鉄 橋本会長「自動車に焦点あたりすぎ」

日本製鉄の橋本英二会長は総理大臣官邸で石破総理大臣と面会したあと記者団の取材に応じ、アメリカのトランプ政権の関税措置をめぐる日米交渉に関連して「製造業と、製造業の品目にアメリカ政府は重点を置いていて、その代表である自動車はアメリカ市場で日本車の競争力が高いということで、そこに焦点があたりすぎているのではないか」と述べました。
そのうえで「アメリカの高関税政策は続くと思う。今回、USスチールを買収した日本製鉄としては、製造業の復活というトランプ政権の目標の実現のために日米での製造業連携が有効であるということを示していきたい」と述べました。
青木官房副長官「大統領の発言承知 誠実に協議続ける」

青木官房副長官は記者会見で「トランプ大統領の発言は承知しているが、こうしたアメリカ政府関係者の発言などに逐一コメントすることは差し控えたい」と述べました。
その上で「先般の赤澤経済再生担当大臣の訪米時にも日米間で精力的に協議を続けていくことで一致している。引き続き日米双方の利益となる合意の実現に向けて真摯(しんし)かつ誠実な協議を精力的に続けていく」と述べました。
小泉農相「赤澤大臣の交渉 しっかり支えていく」

アメリカのトランプ大統領が関税措置をめぐる日米交渉に関連し対日関税の引き上げを示唆したことについて、小泉農林水産大臣は2日午後、記者団に対し「関税の期限と言われている今月9日まであと数日あるので、最終局面の中で交渉上のさまざまな思惑や戦略もあるかもしれない。いずれにしても国益を背負って頑張っている赤澤大臣の交渉をしっかりと支えていく」と述べました。

