2026.7.8
なぜミャンマー人は介護を選ぶのか?
コンビニ、スーパーなど身近なところで外国人労働者を見かけます。
なごみのさと春日西でもミャンマー人、ベトナム人のスタッフがスポットワーカーとして勤務され始めました。ミャンマー人が介護業界で増えている理由を調べました。
なぜミャンマー人は介護を選ぶのか?
執筆者:松里優祐(株式会社JJS 代表取締役)
「ミャンマー人は介護に向いていると聞いたけど本当なのか?」
「介護業界でミャンマーを採用する方法はどんな方法があるのだろうか?」
「ミャンマー人を採用する上で注意点はあるのだろうか?」
このようにお考えの人事担当者様も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、年1000名以上のミャンマー人と面談を行い、150名以上のミャンマー人の就職を成功させた筆者がミャンマー人採用を検討されている人事担当者様に向けて、ミャンマー人が日本で介護職として就職をする背景や採用可能な在留資格やミャンマー人採用時の注意点を解説いたします。
1. ミャンマー人が日本で働く理由とは
ミャンマー人が日本で働く理由は以下の通りです。

ミャンマーの風景
理由①軍事クーデターによる雇用機会の減少と海外就職の流れ
2021年よりミャンマーでは軍事クーデターが発生し、2023年9月25日現在でも軍が政権を掌握しており、今も国内では混乱が続いています。軍事クーデター以降、物価は高騰し、国軍への利益供与を避けるため多くの外資系企業がミャンマーからの撤退を行い、その結果、外資系企業に付随する雇用が無くなり160万人が新たに失業を余儀なくされました。
さらに、ミャンマー公立の大学に進学することは国軍への指示を意味するとして多くのミャンマー人はミャンマー国内での進学を諦め海外に出る選択をしています。
実際に、2023年7月にミャンマー現地で開催された日本語能力検定試験には10万人の応募者があり、これは過去最多の人数です。
このように現在ミャンマーでは雇用機会の喪失や政治不安から海外就職の流れが活発化しており、日本での就職を希望する方が多いです。
理由②賃金水準の違い
ミャンマー人が日本で働く最も大きな理由として、賃金水準の違いがあります。
ミャンマー人の月収の中央値は2021年時点で現地日系製造業の作業員でも1万6000円程度です。ベトナムの現地日系製造業の作業員の月収中央値が3万3000円程度であることと比べると、他の東南アジア諸国と比べても給与水準が低い状況です。そのため、日本やタイ、シンガポール、マレーシアなどに出稼ぎを希望する若者も多いです。
理由③強い親日感情
強い親日感情もミャンマー人が日本を就職先に選ぶ理由の1つです。日本のミャンマーに対するODA(政府開発援助)の額はクーデター発生前の2019年度にはおよそ1900億円となり、世界最大の支援国となっています。
このような、日本とミャンマーとの深い関係からミャンマー人にとっても日本は就労ビザの取得しやすい国の1つであり、海外就職先として人気です。
2. ミャンマー人に人気な職種
ここまで、ミャンマー人が日本で働く理由をお伝えしましたが、ミャンマー人が日本で働く際に人気な職種は介護職です。
実際に出入国在留管理庁の調べによると、2024年6月末現在日本で働く特定技能ミャンマー人は19059人ですが、介護で働くミャンマー人は8083人であり、他業種と比べ最も多い人数です。
ミャンマー人が介護職を選ぶ理由
ミャンマー人に介護職が人気な理由は、ミャンマーでは仏教信仰によりお年寄りや障害者の助けになることは徳を積む行為であると考えられているためです。
ミャンマー人の90%は上座部仏教を信仰しています。上座部仏教は日本の大乗仏教とは異なり仏教の戒律を重視する考えがあります。そこで、輪廻転生という考え方があり現世で徳を積むことで来世で報われるという考えがあります。
お年寄りや障害者を助けることはこの徳を積む行為の一つであり、ミャンマー人の中で重要視されている行為の一つです。そのため、ミャンマー人にとっては介護職は徳を積みながらお金を稼ぐことができる非常に魅力的な仕事として考えられています。
3. ミャンマー人を採用するメリット
こちらの章では弊社ミャンマー国籍のスタッフであるエー・チターへのインタビューを基にミャンマー人を採用するメリットについて解説させていただきます。
ミャンマー人社員
株式会社JJS ミャンマー国籍担当 エーイーチターミャンマー マグエ市出身
日本在住歴7年。日本で初めて就職活動をした際に悪質な就職エージェントに騙されたことをきっかけに、「ミャンマー人の将来をより良くできるような就職先を紹介したい」という思いを持つようになった。その後、外国人人材紹介会社で3年勤めたのちに株式会社JJSに入社。月に100名以上のミャンマー人にキャリアアドバイスを行う。
若い人材を確保できる
若い人材を確保できることはミャンマー人を採用するうえでのメリットの1つです。
ミャンマーの人口は約5000万人ですが、中央値年齢は約28歳であり、人口ボーナス期という労働力が豊富になる時期が2053年まで続くと言われています。
これはベトナムと比較しても高水準で、介護職では夜勤や身体介助に体力が必要な業務が多いと思いますが、ミャンマーには若い人材が豊富であるため体力が豊富な若い労働力を確保できるメリットがあります。
日本語の上達が早い
日本語の上達が早いのもミャンマー人を採用するメリットでしょう。
ミャンマー語の語順は日本語や韓国語と同様に(主語+目的語+動詞)となっており、文法がよく似ていることからミャンマー人は日本語の習得が早いと言われています。
介護職はご利用者様やスタッフ同士でのコミュニケーションが必要な業務であるため、日本語でのコミュニケーションが必須となる職種かと思いますが、ミャンマー人の場合は比較的言語的な障壁が低いため日本語の習得スピードが早くコミュニケーションをとりやすいのが大きなメリットと言えるでしょう。
温厚な性格
ミャンマー人の温厚な性格も採用する上でのメリットの1つです。
ミャンマーでは、穏やかさが重視され人前で怒ることはよくないこととされています。実際に、ミャンマー人は幼少期から家庭や学校で怒られた経験がない人が多いです。
また、ミャンマーでは農業が盛んなため、日本と同じように村社会文化があります。そのため、ミャンマー人は協調性が高く、空気を読む能力に長けており、相手を立てる謙虚な性格を持つ方が多いです。
このように、介護職はご利用者様のペースに合わせることが求められる仕事なので温厚な性格は重要な素質であり、ミャンマー人を採用するメリットと言えるでしょう。
仏教信仰が強く、お年寄りを大切にする

ミャンマー仏教
仏教信仰が強く、お年寄りを大切にする考えがあることもミャンマー人を採用するメリットの1つです。
先述の通り、ミャンマー人の約90%が上座部仏教を信仰しており、嘘をつかないことや人に親切にするなどの徳のある行為に努める人が多いです。
また、仏教の考え方からお年寄りや障害者、子供を大切にする考えがあります。
このような利他精神は特に介護職のような仕事でより力を発揮するでしょう。
4. 介護職でミャンマー人を採用可能な在留資格
介護職でミャンマー人を採用可能な在留資格は大きく3つあります。
特定技能
特定技能は日本の人手不足解消を目的として、即戦力となりうる外国人労働者を受け入れるための制度です。
メリット
特定技能は今最も注目されている在留資格であるため、人材が集まりやすいのが大きなメリットです。実際に2024年6月末時点で3.6万人を超える特定技能外国人が介護職で勤務しており、これは業種別でみると全体の3番目に多い職種となります。また、技能実習と比べて業務内容などについて制限が少なく1人で夜勤を行ってもらうことが可能です。
デメリット
特定技能1号で働ける期間は5年であるため、介護福祉士の試験に合格できなければ5年で帰国をしなければなりません、また、入管法上の義務として外国人が日常生活等で不便がないように継続的に支援をする必要があり、登録支援機関に費用を払って支援業務を委託する流れが一般的です。
在留資格「介護」
在留資格「介護」は介護福祉士国家試験に合格した外国人に発行される在留資格です。
メリット
介護福祉士試験に合格をしているので、介護の知識や技術が豊富で質の高い介護の提供や外国人職員の教育などの業務を任せることが期待できます。また、この中で唯一訪問系サービスなどにも従事してもらうことが可能です。
デメリット
即戦力となりうる人材なので、希少性が高く人材を見つけるのが非常に困難です。また、その希少性から本人の求める求人条件が高い傾向があり好条件を提示しなければ選考に応募してもらえない可能性が高いです。
技能実習
技能実習は国際貢献を目的に発展途上国の若者を受け入れ日本の介護技術を教育するための制度です。
メリット
あくまで研修を目的とした制度であるため、転職という概念が存在しないので、少なくとも3年間は人材を確保することができます。
デメリット
研修を目的とした制度であるため、制度上の制約が多いことがデメリットです。例えば、実習生は指導員によるOJTが必須であるため夜勤を1人で行うことができません。また、実習を適切に実施するため受け入れ人数の制限があったり、設立から3年が経過している施設でしか受け入れを行うことができない、最初の8ヶ月は介護報酬上算定されないなどの制約があります。
また、技能実習では実習生が日本で研修を受ける上で日常生活や業務上での不便がないように継続的に管理を行う必要があります。また、実習の経過状況を月に1回報告をする必要があるため手間がかかりやすいので管理に要する費用が高額になりやすい傾向があります。
5. 採用までの流れ
介護職でミャンマー人を採用するまでの流れは以下の通りです。
STEP①:人材募集・面接
外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接をしましょう。その際、外国人がN4相当以上の日本語検定と介護分野の技能評価試験に合格をしているか確認を行いましょう。
STEP②:雇用契約の締結
面接後、採用が決定したら雇用契約の締結を行います。雇用条件を締結しましょう。ただし、注意していただきたいのは雇用条件は日本人と同等以上の件である必要があり、外国人だからといって安い賃金で雇用できるわけではありません。
STEP③:在留資格認定・変更申請
その後、在留資格認定・変更申請書類の準備を行い、最寄りの入国管理局に申請を行います。
申請から許可がおりるまで約2〜3ヶ月程度かかります。
しかし、すでに在留資格「介護」を取得している外国人については在留期限が4ヶ月以上ある場合は、在留資格変更申請はこの時点で行う必要はありません。
在留期限が3ヶ月以内になったタイミングで在留資格の更新申請を行いましょう。
申請に必要な書類のリストなど、特定技能の在留資格認定・変更申請に関して詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご確認ください。
STEP④:ビザ申請
こちらは海外から採用する場合にのみ必要となるステップです。
無事、入国管理局より在留資格認定証明書が発行されたら、海外にいる外国人に郵送をし、日本大使館にてビザ申請を行います。ビザが無事に交付されたら日本に入国することが可能です。
また、こちらのビザ申請の手続きがあるため、海外から採用する場合は日本国内の外国人を採用するよりも2ヶ月ほど余分に時間を要します。
STEP⑤:就業開始
無事、在留資格認定・変更が完了すれば、入国と勤務開始が可能となります。
6. ミャンマー人の採用前後のポイント・注意点
チター(ミャンマー人担当)
こちらの章ではミャンマー出身のスタッフである私エー・チターがミャンマー人採用前後のポイントと注意点を解説いたします。
ミャンマーの文化を理解する
ミャンマー人と日本人は共通点が多く、価値観が似ているケースも多いです。しかし、日本人と似ているからと言って、文化が全く同じではありません。文化の違いから認識のズレが生まれることも多くあります。
そのため、事業者側はミャンマーの宗教や慣習を理解するために日本人従業員向けの研修などを行うのが良いでしょう。
外国人と良い関係を気づくためのコミュニケーションマニュアルのダウンロードはこちらから
人前では叱らない
ミャンマー人を人前で叱ることは決して行ってはいけません。ミャンマーでは穏やかさが尊ばれる文化を持っているため、幼少期から家庭や学校で怒られたことがない方が多いです。特に、人前で叱られるとひどく傷つき離職につながるケースもあります。そのため、仕事でミスがあっても感情的に叱ることは避け、穏やかに間違いを指摘してあげれば素直に改善してくれるでしょう。
常に気を配る
ミャンマー人は仏教の考え方から他者の気持ちを考えたり、年上を敬って遠慮してしまう方が多いです。そのため、本当は自分の意見があったとしても、上司や相手を気遣い、本心を言えず抱え込んでしまう傾向があります。
そのため、ミャンマー人を採用する事業者は本人が無理をしていないか、気を配り本音が言いやすいような環境づくりが必要です。
7. まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事ではミャンマー人が日本で介護職として就職をする背景やミャンマー人を採用するメリット、採用可能な在留資格、採用までの流れやミャンマー人採用時の注意などを解説させていただきました。
まとめるとミャンマー人は政治不安から日本での就職を希望している方が多く、仏教信仰の影響から利他精神が豊富であるため、介護職との相性のいい国籍であることがわかりました。また、ミャンマー人を採用する際はミャンマーの文化を理解し、穏やかなミャンマー人の気質に合わせ常に無理をさせていないか気を配る必要があることがわかりました。

