2026.6.27
カーボベルデはなぜ強い
カーボベルデ共和国、通称カーボベルデは、大西洋の中央、北西アフリカの西沖合のマカロネシアに位置するバルラヴェント諸島とソタヴェント諸島からなる共和制の国家。人口59.9万人の小さな国家。
そんな国がサッカーワールドカップで健闘している。


躍進のカーボベルデ。その強さは戦術だけでは説明できない。特有の精神文化“モラベザ”。小国らしく謙虚に、しかし希望を持って【W杯】
「最高のレベルで競いたい」

スペイン、ウルグアイと伍して戦ったカーボベルデ。最終節サウジ戦の戦いにも注目だ。(C)Getty Images
北中米W杯で、最大級のサプライズを演じているチームの一つがカーボベルデ代表だ。
人口約60万人。W杯出場国としては史上屈指の小国を代表する“ブルーシャークス”ことカーボベルデは、グループステージ(H組)第1戦で優勝候補のスペインを0-0で足止めすると、第2戦では南米の強豪ウルグアイと2-2で引き分けた。
2試合連続のドローで勝点2。H組ではスペインに続く2位タイにつけており、最終戦のサウジアラビア戦でグループステージ突破を狙う。
この快進撃を支えるのが、“ブビスタ”ことペドロ・レイトン・ブリト監督だ。大会前からブビスタ監督は「最高のレベルで競いたい」と繰り返してきた。スペインやウルグアイといった世界的な強豪を前にしても、その姿勢はまったく変わらない。
「最初から私たちが言ってきたことは、最高のレベルで競いたいということです。それが、私たちがしようとしていることであり、私たちがしてきたことです」とブビスタ監督。そして、結果以上に価値があるものとして、チームの在り方を挙げた。
「結果よりも重要なことは、チームとしての私たちのアイデンティティ、強さ、団結、粘り強さを示す、それができることです。私たちはここで競うために来ています」
実際、その言葉はピッチ上で証明されている。スペイン戦では、27本ものシュートを浴びながら無失点。40歳の守護神ヴォジーニャを中心に最後まで守備組織を崩さず、欧州王者から歴史的な勝点1をもぎ取った。ただ耐えるだけではなく、自陣からパスをつないで前進する姿勢も失わず、世界中に強烈な印象を残した。
続くウルグアイ戦では、21分にケビン・レニーニが直接FKを突き刺して先制。いったん逆転を許しながらも、後半にエリオ・ヴァレラが同点弾を決め、再び追いついてみせた。相手が南米屈指の強豪であろうと、最後まで諦めることなく勝点を積み上げた。ブビスタ監督は、この粘り強さこそ、チームの象徴だと語る。
「最初の試合から、結果がどうであれ、まだ突破のために戦える状況にいることを知っていました。世界全体に、私たちが突破を争う資格があることを示したかった。今日の試合でそれを示したと思います」
敬愛するビエルサ監督との交流も実現

ブビスタ監督は、チームのあるべき姿を強調。「アイデンティティ、強さ、団結、粘り強さを示す」。(C)Getty Images
このチームの強さは、戦術だけでは説明できない。欧州育ちの選手と国内組が混在する代表チームをまとめ上げるため、ブビスタ監督はカーボベルデ特有の精神文化である「モラベザ」を軸に据えてきた。
他者への思いやりや温かさを意味する価値観であり、選手同士の結束や相互理解を何より重視する。だからこそ指揮官は、大舞台でも萎縮することなく、自分たちらしく戦うことを求めている。その根底には、小国だからこそ世界に示したい強い思いがある。
「私たちのような小さな国家のチームが、財政的に苦労していても、我慢強さがあり、戦い続け、組織的に働けば、主要なチームと肩を並べられる。そのことを示したいのです。スポーツ、とりわけフットボールは組織、勇気、決断に関係しています。一度、ピッチに入れば、多くのことは同じになります。相手がどれだけ大きな国であっても、です」
ウルグアイ戦後には、長年敬愛してきたマルセロ・ビエルサ監督との交流も実現した。
「私や多くの指導者にとって、彼は特にアフリカにおけるマスター(師匠)です。彼がキャリアで成し遂げたことを研究してきました」とブビスタ監督。試合後には、母国から持参した記念品を贈呈し、「個人的に会うことができて本当に幸せだった」と笑顔を見せたという。ビエルサ監督からもチームの戦いぶりを称賛され、健闘を祈ってもらった。
もっとも、ブビスタ監督はまだ何も成し遂げていないと考えている。グループステージ突破が見えてきた今も、浮かれる様子はない。
「私たちのチームは、地に足がついていなければなりません。挑戦的な試合になることを知っています。サウジアラビアも突破の可能性を持っています。スペインやウルグアイと戦ったからといって、次の試合で私たちに利点があるとは思いません。私たちは敬意を払い、必要なスポーツマンシップと真摯さで、この試合に向き合う必要があります」
小国らしく謙虚に、しかし希望を持って戦いに臨んでいく。大西洋に浮かぶ小さな群島国家が、世界の強豪と互角に渡り合う。そこにあるのは偶然ではない。組織、団結、粘り強さ、そしてモラベザの精神が生み出した必然だ。
スペインとウルグアイを相手に示した団結力を失わずに、サウジアラビアに勝ち切れるか。“ブルーシャークス”の進撃は続く。
一覧に戻る
そんな国がサッカーワールドカップで健闘している。


躍進のカーボベルデ。その強さは戦術だけでは説明できない。特有の精神文化“モラベザ”。小国らしく謙虚に、しかし希望を持って【W杯】
「最高のレベルで競いたい」

スペイン、ウルグアイと伍して戦ったカーボベルデ。最終節サウジ戦の戦いにも注目だ。(C)Getty Images
北中米W杯で、最大級のサプライズを演じているチームの一つがカーボベルデ代表だ。
人口約60万人。W杯出場国としては史上屈指の小国を代表する“ブルーシャークス”ことカーボベルデは、グループステージ(H組)第1戦で優勝候補のスペインを0-0で足止めすると、第2戦では南米の強豪ウルグアイと2-2で引き分けた。
2試合連続のドローで勝点2。H組ではスペインに続く2位タイにつけており、最終戦のサウジアラビア戦でグループステージ突破を狙う。
この快進撃を支えるのが、“ブビスタ”ことペドロ・レイトン・ブリト監督だ。大会前からブビスタ監督は「最高のレベルで競いたい」と繰り返してきた。スペインやウルグアイといった世界的な強豪を前にしても、その姿勢はまったく変わらない。
「最初から私たちが言ってきたことは、最高のレベルで競いたいということです。それが、私たちがしようとしていることであり、私たちがしてきたことです」とブビスタ監督。そして、結果以上に価値があるものとして、チームの在り方を挙げた。
「結果よりも重要なことは、チームとしての私たちのアイデンティティ、強さ、団結、粘り強さを示す、それができることです。私たちはここで競うために来ています」
実際、その言葉はピッチ上で証明されている。スペイン戦では、27本ものシュートを浴びながら無失点。40歳の守護神ヴォジーニャを中心に最後まで守備組織を崩さず、欧州王者から歴史的な勝点1をもぎ取った。ただ耐えるだけではなく、自陣からパスをつないで前進する姿勢も失わず、世界中に強烈な印象を残した。
続くウルグアイ戦では、21分にケビン・レニーニが直接FKを突き刺して先制。いったん逆転を許しながらも、後半にエリオ・ヴァレラが同点弾を決め、再び追いついてみせた。相手が南米屈指の強豪であろうと、最後まで諦めることなく勝点を積み上げた。ブビスタ監督は、この粘り強さこそ、チームの象徴だと語る。
「最初の試合から、結果がどうであれ、まだ突破のために戦える状況にいることを知っていました。世界全体に、私たちが突破を争う資格があることを示したかった。今日の試合でそれを示したと思います」
敬愛するビエルサ監督との交流も実現

ブビスタ監督は、チームのあるべき姿を強調。「アイデンティティ、強さ、団結、粘り強さを示す」。(C)Getty Images
このチームの強さは、戦術だけでは説明できない。欧州育ちの選手と国内組が混在する代表チームをまとめ上げるため、ブビスタ監督はカーボベルデ特有の精神文化である「モラベザ」を軸に据えてきた。
他者への思いやりや温かさを意味する価値観であり、選手同士の結束や相互理解を何より重視する。だからこそ指揮官は、大舞台でも萎縮することなく、自分たちらしく戦うことを求めている。その根底には、小国だからこそ世界に示したい強い思いがある。
「私たちのような小さな国家のチームが、財政的に苦労していても、我慢強さがあり、戦い続け、組織的に働けば、主要なチームと肩を並べられる。そのことを示したいのです。スポーツ、とりわけフットボールは組織、勇気、決断に関係しています。一度、ピッチに入れば、多くのことは同じになります。相手がどれだけ大きな国であっても、です」
ウルグアイ戦後には、長年敬愛してきたマルセロ・ビエルサ監督との交流も実現した。
「私や多くの指導者にとって、彼は特にアフリカにおけるマスター(師匠)です。彼がキャリアで成し遂げたことを研究してきました」とブビスタ監督。試合後には、母国から持参した記念品を贈呈し、「個人的に会うことができて本当に幸せだった」と笑顔を見せたという。ビエルサ監督からもチームの戦いぶりを称賛され、健闘を祈ってもらった。
もっとも、ブビスタ監督はまだ何も成し遂げていないと考えている。グループステージ突破が見えてきた今も、浮かれる様子はない。
「私たちのチームは、地に足がついていなければなりません。挑戦的な試合になることを知っています。サウジアラビアも突破の可能性を持っています。スペインやウルグアイと戦ったからといって、次の試合で私たちに利点があるとは思いません。私たちは敬意を払い、必要なスポーツマンシップと真摯さで、この試合に向き合う必要があります」
小国らしく謙虚に、しかし希望を持って戦いに臨んでいく。大西洋に浮かぶ小さな群島国家が、世界の強豪と互角に渡り合う。そこにあるのは偶然ではない。組織、団結、粘り強さ、そしてモラベザの精神が生み出した必然だ。
スペインとウルグアイを相手に示した団結力を失わずに、サウジアラビアに勝ち切れるか。“ブルーシャークス”の進撃は続く。

